EC(Eコマース)といえば、オンライン上での通販のことを指す。
スマートフォンの普及に伴い、更に市場が拡大していくだろうと言われている業界だ。
実店舗を持つには、店舗にかかる経費などのリスクが伴う。
リスクの少ないECで売上を確保するのは、理想的な収益モデルだと言えるだろう。
そして、EC業界ではソーシャルメディアの台頭により「ソーシャルコマース」が注目されていた。
ソーシャルメディアを利用することで、クチコミ効果を高めて売上を見込もうとする動きだ。
しかし、最近こんな記事が話題になった。
■Fコマースから続々と撤退するブランドたち、Like数370万件でデイリー閲覧数1,500のとほほな現実
http://www.techdoll.jp/2012/02/24/fcommerce_realitybites/
何が問題だったのか
まず、ソーシャルメディアの本質を理解していなかったというところが大きな問題だった。
Likeという数字の重み。これは、各取り組みによって全然違うものになる。
心の底からLikeされているのか、何かのために仕方なくLikeされているのか。
これについては、過去にこのブログにも書いたことがあるので参照していただきたい。
Likeを370万件集めるというのは、もの凄いことだ。だからこそ、集め方に悔いが残る。
Likeを押さないとコンテンツを閲覧することができない、という形式にしていたらしいが、
この形は「Likeを集めるためだけ」の施策としては有効だが、効果は得られにくい。
これほどの数字を集められる企業なのであれば、
コーポレートサイトとの連携や自社メディア(メールマガジンなど)との連携などで、
比較的簡単に質の良いLikeを集めることが出来たはずだ。※ただし時間はかかるだろう
質の良いLike=共感
ソーシャルメディアマーケティングにおいて、一番忘れてはならないキーワード。
それが「共感」だ。
「共感」を前提に「ファン」になり、そこから「クチコミ」が生まれる。
一番大切な部分をすっ飛ばしてしまうと、その後の行動に期待が持てない。
企業は税金を納め、従業員に賃金を払うことで社会貢献をしている。
だからこそ、マネタイズは必ず必要なポイントになる。
上からは数字を要求されるが、担当者は本質的な数字を追わなければならない。
難しいポイントだが、ここを諦めてしまうと本末転倒だ。
まだまだメインフィールドには成り得ない場所だという認識
Facebook単体で黒字化させようという考えは、今のところ暴挙に限りなく近い。
なんせ海外を見渡しても成功例は少なく、Facebook自体が成功例を探すのに奔走している状態だ。
ただし、企業ブランディングには有効だろう。
企業と生活者が目線を合わせる場所として活用される例も多い。
実際にこのブログにも、企業の公式アカウントがコメントを残した例がある。
地道な活動ではあるが、ブランディングとはそういうものだと思う。
信用を失うのは一瞬だが、信用を得るのには時間がかかる。これは人も企業も同じだ。
TwitterやFacecookを使ったアクティブサポートの可能性は、かなり大きなものがあるだろう。
■Facebookを企業で活用する -アクティブサポート編-
http://www.goarick.com/201112_activesupport■アクティブサポートでLINEの印象が良くなった話
http://www.goarick.com/201201_line
Fコマースに新たな進展
そんな中、先日Fコマースにとって重大な発表が行われた。
■Facebookのモバイル事業者課金はアプリ経済をクレジットカードのない層にも拡げる
http://jp.techcrunch.com/archives/20120227facebook-mobile-operator-billing/■Facebookが携帯電話事業者と提携 Apple、Googleとともにモバイル3強時代へ
http://techwave.jp/archives/51732145.html
Fコマースのマネタイズにとってひとつの大きな壁だったのが、Facebook Creditの普及率だった。
■Facebook Creditとは
Facebookが独自に用意している仮想通貨。
このFacebook Creditを使って取引をしてもらうことで、Facebookは事業者から30%のマージンを得る。
Facebook Creditが普及していないのであれば、自社ECサイトに誘導するしかない。
そこで会員登録をしてもらって、お金を払ってもらう。
ページ遷移数が多く、コンバージョン率もどんどん下がっていく。
そこに、モバイル連携というGood Newsが飛び込んできた。
日本ではソフトバンクとKDDIが対応
ドコモが対応しないのは、プラットフォーム戦略上の判断だろう。
iPhoneに参入しないのも、i-modeという自社プラットフォームがあるからだろうと言われている。
この辺は徹底している印象を持った。
モバイル連携により、Facebook Creditの購入のハードルがグンと下がり、
Fコマースへの期待度も上向きになってきたのではないだろうか。
ただし、ここでもう一度気をつけておきたいことがある。
「ソーシャルメディアは商品を売りつける場所ではない」ということだ。
商品を売りつけられたいと考えている消費者など、ほとんどいないことは明白だ。
消費者と同じ目線でコミュニケーションを取り、企業ブランディングを行う。
あくまでも「販売手段のひとつとして」Fコマースも用意しておく。
当面はそのぐらいのスタンスで構えなければ、少々寒い結果になってしまうだろう。
キャンペーンには使える
消費者は損をしたくないと思っている。
提示された価格が「価格.com」より高ければ不満だ。
だが、事業者はFacebook Creditの利用で30%のマージンを要求される。
価格競争に陥ってしまうのはナンセンスな話だろう。
単純に価格を下げるだけのキャンペーンではなく、Facebookならではの付加価値をつける。
顧客との信頼関係を築くものが良いだろう。
それこそがFコマースの真価であり、これまでに無かった未知の世界なのではないだろうか。